« 家族会 | トップページ | 父と娘 »

『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(理論社)

理論社の『よりみちパンセ』と題されたシリーズは、

「中学生以上すべての人」が対象となっている。

生協のカタログでこの本の題を見たとき、

半分は娘のため、

半分は自分のために購入を決めた。

万が一のことを考えると、

家人の収入があてにならなくなる

または

家人の収入をあてにしなくなる可能性があるから、

「自分で食べていく」ことを改めて考えなくては、

と思ったからだ。

10代のころの私は、子どもが嫌いで、

結婚はしないつもり、

どんな仕事をするかはわからないけど、

ちゃんと自分で食べてくつもりだった。

実は、

「自分でお金稼げるようになったら、

こんな親から逃げ出すんだ。」

と思っていたのだ。

しかし、私が親元から逃げ出すのに

実際に使った手段は

結婚して、他の土地に行く、

という方法だった。

家人となら、なんだか一緒に子育てできるような気がしたのだ。

実際には、大事な場面では、

「お前に任せているから。」

と逃げられていたわけだけど。

それはともかく、若い子を念頭に置かれて書かれたこの本は

まさに、今の自分に向けて

書かれたものであるような気がした。

それは、西原理恵子が、実の父はアルコール依存症、

育ての父はギャンブル依存症で

伴侶となった鴨志田穣氏もアルコール依存症、

という、クラクラするようなACだったからかもしれない。

彼女が育った環境は貧しく、

育ての父は、借金のあげく自殺してしまう。

それは、高校を退学させられた結果、

大検を使って美大を目指していた彼女の、

美大の受験日のことだったという。

この本は、

そうしたどん底から、

「働く」ということで

生まれた環境を乗り越えてきた彼女の半生記、

ともいえる。

鴨志田氏もまた、アルコール依存症の父を持っており、

その鴨志田氏がアルコール依存症になり、

「負のループ」が繰り返されるそうになった。

それを断ち切るために、

西原理恵子は離婚を決意したというわけだ。

そして、鴨志田氏も、

自分の心に開いた穴に果敢に立ち向かって

断酒に成功したのだそうだ。

西原理恵子は、

「アルコール依存症という病気をちゃんと治して

家族のもとに帰ってきた」

と書いている。

でも、その後、鴨志田氏は、

末期のがんで半年で亡くなってしまったのだから、

やっぱり、アルコール依存症に勝てた

とは言えないんじゃないか、

と、私は思ってしまう。

もちろん、たとえ半年でも、

自分たちは「負のループ」を断ち切り、

あたたかい家庭生活を手に入れることができた、

と、当事者たちが感じられるのなら、

あれこれ言うのは野暮である。

しかし、結局のところ

極度の飲酒生活が

鴨志田氏を死に導いたといえるのだから、

アルコール依存症に負けはしなかったけれど、

勝ちもしなかった、

ということになるような気がする。

でも、そういう壮絶な人生を生きてきた人の言葉だから、

私には、響いてくる。

 覚えておいて。

 どんなときでも、働くこと、働き続けることが

 「希望」になるってことを。

 ときには、休んでもいい。

 でも、自分から外に出て、手足を動かして、

 心で感じることだけは、諦めないで。

 これが、わたしの、たったひとつの「説法」です。

 人が人であることをやめないために、

 人は働くんだよ。

 働くことが生きることなんだよ。

 どうか、それを忘れないで。

|

« 家族会 | トップページ | 父と娘 »

心と体」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533907/45956588

この記事へのトラックバック一覧です: 『この世でいちばん大事な「カネ」の話』:

« 家族会 | トップページ | 父と娘 »